例のあれの供養みたいなノリの奴(1/4)

そろそろけっこう時間も経ってもういいんじゃないかなーって感じで、例のあれの供養みたいなノリの奴を書いてたら予想外に長くなってきたから(またかよ)順次公開していく感じです。
これ別にキリのいい所まで書かないし続く予定もないし、そもそも途中で飽きるかもしれないくらいのふんわりとしたモチベーションでやってます。

例のあれの供養みたいなノリの奴(1/4)-プロローグ 「急に小学生になるのやめーや」


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 空がある。
 真っ青な昼の空に白と黒の太陽が浮かんでいる。
 この世界には白と黒の二つの太陽があり、夜になると赤と青の二つの月が昇る。
 1日はおよそ1時間――――正確には57分と36秒、地球の25分の1だ――――であり25分もすれば太陽は沈み夜が来るだろう。
 そしてその二つの太陽の下、草原を駆ける二人の人影があった。
 
 
「そういえば今期のアニメってなんか観てる?」
 駆けながら胸に青い鉄鋼板を装備した男は大剣を八相に構える。
 その先にいるのは2メートルほどの巨人である。身体は黒い石でできており、腰に刀を帯びている。
「あ、左側から行く」
 鉄鋼板の男は言葉通り、蛇行して左側から巨人に接近する。
「了解。今期はえー……あれ観てるかな、ほら4コマ雑誌原作の奴、なんだっけ」
 鉄鋼板の男の声に応えた黒い装束に身を包んだ男は短刀を腰だめに構えて右手から巨人に接近する。鉄鋼板の男よりわずかにタイミングを遅らせている。
「あー……あれねー、はいはい。俺観てないけどどうよ」
 鉄鋼板の男の接近に気付いた巨人は身体の向きを変え、鉄鋼板の男を正面に捉える。
 巨人――――ブシドーゴーレムは抜刀術による必殺といっていい威力の初撃を持つが、刀を帯びた左側からの接近に対しては刀を抜くことができない。
 そのため、攻撃対象と認識した際にもしも左側にいたのであればそちらに身体を向けるようにプログラムされている。
 そしてブシドーゴーレムは一定以上近付いた相手を攻撃対象とするため、最初に近付いてきた鉄鋼板の男を攻撃対象とする。
 あと1歩か2歩でブシドーゴーレムの間合いに入るというところで鉄鋼板の男は急制動をかけ停止した。
 すでに何度もブシドーゴーレムと戦い、完全に間合いを見切っているという動きだ。
 迎撃しようとしていたブシドーゴーレムはタイミングを外され動きを止める。
「面白いとかじゃないけどまあ多幸感はあるかな――――っと!」
 黒装束の男は気合いを入れながら腰だめに構えた短刀をブシドーゴーレムに突き入れる。
 側面攻撃に成功し、ブシドーゴーレムが硬直する。
「ふーん、じゃあ観てみようか、な!」
 その隙に鉄鋼板の男は踏み込み剣を叩きつける。
 こうして二人が接近してしまえば腰に刀を帯びている状態のブシドーゴーレムは有効な攻撃手段を持たない。
「もうじきレベル23いくしそしたらイングランド式のガードディヴィジョン装備付けられるようになるから楽しみー」
「あー、なんか赤い奴だっけ?」
「そうそう、もう買ってあるからあとはレベル上げるだけ。2週間くらい買ってから倉庫で寝てた」
「気が早すぎる」
 話ながら二人は交互に手持ちの武器をゴーレムに叩きつける。
 このタイミングをずらし二人で突撃し、片方が側面攻撃で硬直を作り接近戦に持ち込むというのは、 前衛職二人による最もポピュラーなブシドーゴーレム狩りのパターンである。
「あれ、確かデザイナー装備でリアルでも発売だよね。リアルでも着る?」
「あんな派手なのリアルで着れるわけないだろ……。確かあのデザイナー人間だし、もうちょっとリアルで着れそうなデザインの出したら考えるんだけどなー!」
 ダメージが一定を超え、ブシドーゴーレムは光の粒子となって消える。この世界ではモンスターの死体は残らない……もっとも肉というアイテムに変わることはあるが。
「あれ、ひょっとして人工知性体?」
「あー、それ聞くのハラスメント行為だぞー!いけないんだー!GMに通報しちゃおー!」
「急に小学生になるのやめーや!」
 二人は笑いながら次のブシドーゴーレムに狙いを定め駆寄る。走っても息が切れることはないため、普段通りに会話することができる。
 
 この世界の名前はゼル・リドル。ゲーム、バーチャルクエストの舞台であり、ゲームの作り出した仮想空間だ。

study-●バーチャルクエストの概要 その1●-

ねえねえ、エイプリルスノウ。私たちが入ったこのゲームってどんなゲームなの。

えー、このバーチャルクエストはジャンルはいわゆるVRMMO(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)と呼ばれるジャンルで直訳すると仮想現実大規模多人数オンラインってところね。
頭に特殊な危惧をつけて脳と電気信号をやりとりすることで感覚を得て仮想空間に本当にいるかのように体験できる技術を使ってみんなで仮想の空間に行って、モンスター倒したりプレイヤー同士で殺し合ったり釣りしたり武器を作ったりプレイヤー同士で殺し合ったりするゲームよ。

なるほどなるほど。あれ、今プレイヤー同士で殺し合うって2回言いませんでした?

さて、元々この仮想現実作ってその中で身体を自由に動かしたりする技術って三十世紀委員会の開発なんだけど、あいつらって特定のスポンサーを付けずに活動するためによく開発技術を商品にしてるけどそのパターンね。ひょっとしたら何らかの実験目的もあったのかも。
そうして三十世紀委員会が作った史上初のVRMMOがこのバーチャルクエストってわけ。史上初だけあってめちゃくちゃ売れたわ。

へー!これ人気のゲームだったんですね。

まあ、史上初だからめちゃくちゃ売れたわけだけど、当然ゲーム会社じゃないんだからそんなゲーム作りのノウハウとかないしゲームの出来は色々と推して知るべしって感じだけど。

えーと……さっきからなんだか言葉の端々から不穏な空気を感じるんだけど……。

さておきまあ、それでも大人気ゲームであることは間違いないし、インターネットでもVC、仮想、火葬、過疎糞、修羅の国オンライン、モヒカンオンライン、ヒャッハー、など様々な愛称で親しまれているわ。

後ろに行くほど正直あまりやりたくならない名前で呼ばれてるような……過疎糞って……。

Virtualを和訳して仮想をさらに略して過疎、クエストを略して糞ってことね。

あ、ただの略称なんだ!

まあ、やってる人がすくなくて過疎化現象が起ってるクソゲーって意味でしょうけど。

だよねー……うん、わかってた。

まあ、いわゆるテキストベースのコミュニケーションだと2,3文字で省略したいし最初はVQって呼ばれてて、
技術を売ってVRMMOが他にも出てくるようになるとVirtualの和訳として仮想って呼ばれるようになったんだけど、人気がなくなってくると火葬とか過疎糞とか呼ばれるようになったってことね。

えー、じゃあその後ろの修羅の国オンライン、モヒカンオンライン、ヒャッハー、っていうのは……まあ、だいたいわかるけど。

まあ、詳しくは後で話すけどこのゲームめちゃくちゃ治安悪いのよね……。