例のあれの供養みたいなノリの奴(2/4)

前回の記事を見てみたらすげー短くて「あれ?これなら全部一括で記事にできない?」って気持ちになったけど、このときはまだ1万文字くらいにまとめようという気概があってそれに合わせて調整してた。
今回くらいから崩壊してくるけど、今回はまだ気概が残ってて頑張って短くまとめようとしているのがわかる。
ちなみにタイトルを台詞から取ってるのはガンダムXリスペクトです。

例のあれの供養みたいなノリの奴(2/4)- 「なんで水嶋はクオリアデザインを学んだの?」

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 これは三人がバーチャルクエストにログインする前日の話。
 
 
 ……ん、電気がついてる。
 星を見る物<スター・ウォッチ>は四月の雪<エイプリルスノウ>の部屋から灯が漏れているのに気付いた。現在は深夜2時だ。
 エイプリルスノウと暮らすようになってからそれなりに経つがエイプリルスノウがいつも何時くらいに寝るかそういえば知らない。
 ……ひょっとしてエイプリルスノウいつもこれくらいの時間まで起きてる?
 人工知性体も睡眠は必要とするが、その時間は人間より少ないことが知られている。スターウォッチもいつも水嶋拓生に合わせて6~7時間ほど寝ているが4時間も寝れば本来大丈夫らしい。
 実際、スターウォッチもふと目が覚めて水を飲んだら目が冴えてしまい、もう朝まで眠らなくていいかな、という気持ちになっている。
 ドアをノックする。
「私ー」
「ん、どうぞー」
 声が返ってきたのでエイプリルスノウの部屋に入る。
「なんだか目が冴えちゃって。そしたらエイプリルスノウが起きてたっぽいから」
「私はまだ寝てないからあと1時間くらいで寝ようかなー、って」
 スターウォッチはエイプリルスノウの前髪が変な風に中心に寄っているのを見て、直前までゴムで前髪をまとめていたのを知る。彼女が一人で集中して作業するときは邪魔にならないように前髪をゴムでまとめるのを知っている。
 ……ノックしたのが私じゃなくて拓郎様だったら多分髪をちゃんと梳いてから開けたのかな?
 多分、拓郎は彼女が一人でいるときに前髪をまとめることがあることを知ることはないだろう。それを知れるのは気心の知れた自分の特権だと思うと少し誇らしくなる。
 ふと、エイプリルスノウがディスプレイに表示しているものとその前に広げているノートに気付く。
「また、何かの資格の勉強?」
「ん、まあね。人工知性体関係の資格ってけっこう認可された事務所に所属してないと取れないの多いし、せっかく所属したし取ってこうかな、って」
「毎日これくらいの時間までやってるの」
「そうね、毎日――――は、どうだったかなー。うん、毎日はやってなかったかも、多分」
 その言い方から毎日これくらいの時間までやってたんだな、と悟る。それを途中で誤魔化したのは何を言われるのか察したからだろう。だから期待通り言ってやる。
「もー、駄目だよー。私たちの脳を壊す要因ってわかんないけど、ストレスと睡眠不足だけはほぼ確実って言われてるんだからね」
「うっ……ほらでも」
「でもじゃなくて。ここに着たときに私の方が先輩だから指示に従うって言ったよね?」
「……言いました」
「じゃあ、従ってね。私や拓郎様ほど寝ようとは言わないけど5時間くらいは寝ておかないと」
「はーい」
 エイプリルスノウは怒られた子供のようにしゅんとする。咄嗟に誤魔化そうとした自分を反省しているのだろう。
 エイプリルスノウと暮らすようになってから随分と経つが、前は〝なんでもできるけどたまに一人で悩みすぎる〟くらいに思っていたエイプリルスノウの評価が〝だいたいいつも悩んでるけど色々できる〟くらいになっている。
「あ、さっき言いかけたことだけど。私の脳機能ちょっと回復傾向にあるかも」
「あ、そうなんだ。おめでと」
「もうちょっと経過見ないと確証持てないから言ってなかったけど。レベルDだった注意/集中能力がB+になってた。まだ全然回復してないんだけどさ。あはは」
 まだ全然回復してないのにそんな喜ばせちゃって照れるな、というようにエイプリルスノウは最後に少し困ったように笑った。
 その笑顔を見てスターウォッチは思う。
 ……この人、平均がレベルCだって分かってるんですかねー!
 おそらくエイプリルスノウの中では能力評価とはA-からA+までが並んでいるものでA-を取ってしまったら苦手分野、くらいの認識なのだろう。元エリートと聞いたことがあるしおそらくそういう認識を共有出来る世界で生きていたのだろう。
 ……私が学校に通ってたときはBが出れば得意分野っていう認識だったんだけどなー……。
 一緒に暮らしてて気付いたのはエイプリルスノウの自己評価の低さと、客観的な能力の高さのギャップだ。それも無意識にやっているから時々酷く嫌味になる。
 ……まあ、私も散々やらかしたことなんだけど。
 まさか自分が軍用ロボット並の出力が与えられている特別製だと知らなかったときは、他の人も自分と同じように動けると思って色々と周囲に無茶を言ってしまった。「信号とかあるし1キロくらいなら車より走った方が速いかな」と言ったときの周囲のドン引きした視線を忘れられない。
 エイプリルスノウは「水嶋はめちゃくちゃ才能あるのにやる気がなくてむかつく」みたく言っていたが、まさか自分も同じようなやきもきした気持ちを抱かせているとは知らないだろう。
 そういう意味ではここに住んでる3人は外から見たらナチュラルに高い能力を持った仲間と呼べるかも知れない。うっわ、なんだか嫌な集団だ。
 とはいえ、ひょっとして彼女から自分たち以外の友人の話が出てこないのはそのあたりに原因が悪いんじゃないかと思ってしまう。知らないことをこんなふうに推測するのは申し訳ない気持ちがあるけど、優秀で自尊心も高いいわゆるエリートの中に混ざって「はあ、私は失敗してこんな所にきてしまった」みたいな態度を取って周囲を苛つかせる彼女を想像するとリアルすぎる。
 失礼だと思うが想像がリアルすぎてすごく心配になってくる。どうしよう、すごく心配だ。ひょっとしたらこれは母性と呼ばれる感情かもしれない。
「まあ、ここはやりたいことやれてるしストレスの少ない生活だしね。回復が確定したら回復事例としてちょっと本格的に学校でデータ取ってくるかも。ん、どうしたの?」
「あ、いえ、うん、これかも三人で仲良く頑張っていこうね!」
「あ……うん、頑張ろうね」
 自分が大量生産なことに耐えられなくなった人工知性体が性能が落としたり精神の均衡を崩した事件――――いわゆる機械の憂鬱からもわかるように人工知性体はけっこうストレスに弱くそしてそれが性能に直結している。
 だからこそ人間によるクオリアデザインが必要とされている。自分は拓郎様にデザインされたからストレス耐性は高いはずだ。
 さておきクオリアの乱数生成世代であるエイプリルスノウはただでさえ精神の均衡を崩しやすい。それなのに一人で考え込んで罪悪感を抱える癖がある。
 ……うわぁ。
 どうしよう。すごくエイプリルスノウのこの先が心配だ。
 あ、でも
 ……回復してきてるってことはここは彼女にとって過ごしやすい場所なんだ。
 それはスターウォッチの目指すところであり守るべきだと考えているものだ。
 ……そっか、ちゃんとできてたんだ。
 胸に安堵が広がると同時に、なんとしてでも守らないとという使命感も覚える。
「難しい顔してなにか考えると思ったら急に笑って、なに考えてるの?」
「って、せっかく回復してきてるのに夜更かしばかっりしちゃ駄目だよ!」
「うっ、ごめんって。次から気をつける」
 
 
 
 
「ところでエイプリルスノウってだいたいいつも勉強してるよね?」
 早く会話を切り上げてエイプリルスノウを眠らせないと、とは思うもののいい機会だから普段から気になっていること聞いてみる。
「それってその……」
 ……まだまだ足りない、ってそんな風に思っているからってことだよね。
 エイプリルスノウのクオリアデザインができないという劣等感については分かっているとは言えないけど、それでも知っているつもりだ。それが彼女を鬱々とさせたり攻撃的にさせたりしていた。
 でもその後、それとは別の方法で人工知性体生成に関わって行きたいと思って、そしてそれは今達成されているはずだ。だから気合いを入れて色々と勉強しているという解釈もできるがそれにしてはどこか必死すぎる。
 ……まるで全然足りない物を急いで補おうとしているみたいだ。
 でも、なにがそうさせているのかが分からない。彼女は今、やりたいことができているはずだ。
「ん、この前のみみみ星の一件あったじゃん」
「はい」
 それは何となくこの三ヶ月くらい触れないでいたいた話題だ。あの一件で水嶋拓郎は地球人としてみみみ星の友人を失っており――
 ……そして殺したのは私だ。
 胸が軋む。苦しい。でも間違っていない、私たちの生活を壊しにくるのなら何度でも戦ってやる、とも思う。
「あれから落ち着いてみて、ああ、私はなんの力もないんだな、ってそう思ったの」
「え、あれ、私の記憶だと街を駆け巡って一騎当千の活躍をした後、光線銃片手に大暴れして、最後にはみみみ星に説教までしたと思うんだけど」
「んー、そうじゃなくて。最初はね、水嶋はどうして私に事前になにも言ってくれなかったんだろう、ってそう思ったの」
 それを聞いてスターウォッチの胸に納得の感情が広がる。
「でも、もしも自分は異星人で異星人の侵略に備えて色々と開発している、ってそう言われたとしてさ。私には何もできないじゃん」
 ……エイプリルスノウは自分が足りないから相談されなかったって、そう思ってるんだ。
 だから次は相談されるように、できることを増やしていっているのだろう。相手に相談して欲しかったとは一言も言わず自分の力不足だけ考える、エイプリルスノウらしい考え方だ。
「そんな相談されても正気に戻れって殴るくらいしかできないんじゃん」
「え、あれ?そういう話だったの!?」
「いやまあ、そんな相談を受けたら私はどうするかな、って考えたらやりそうなのはそれかなー、って」
「いやうん、やりそうだけどね……。っていうか相談されなかったっていうと私も何も聞いてなかったんだけど……」
「あんたに正気に戻れって殴られたら死ぬからね」
「拓郎様を殴ったりしないよ!?百歩譲って殴るとしても殺したりしないよ!?」
「冗談よ」
 エイプリルスノウは言ってけらけらと笑う。
「あんたは戦う予定なんだからあんたに話さないのは信頼でしょ。ベルトができてから話しても二つ返事で了承されるだろう、って。私に話さないのは外に置く行為だから全然意味が違うの」
「うーん、話さなかったのにはなにか理由ががあったんじゃない?」
「そうね。水嶋はみみみ星が発展しないのを前提に色々と考えてたから、あんなに早く来るとは思ってなかったんだろうし。ベルトが完成してたらもっと簡単に撃退できたんだろうから私をそこに関わらせる理由はなにもないというのもあるわね。そんな中、正気を疑われて殴られるリスクを負うこともない、ってまあくらいに考えてたんじゃないかしらね」
「あれ!?そこまで考えるなら相談されなかったとか気に病む必要なくない!?あと相談されたら殴るのは当然なんだ……」
 まあそうなんだけど、と言いながらエイプリルスノウは指でとんとんと机を叩いて言いよどむ。
「あのさ――――なんで水嶋はクオリアデザインを学んだの?」
 
 
 
「前にちやほやされるのが楽しくてやってたみたいな話を聞いたことがあるけど、地球に遊びに来た水嶋がそんなことする必要ないと思わない?」
 全部私の妄想でなんの根拠もない話だからそんな真面目に聞かないでね、とエイプリルスノウは前置きをした。
「水嶋はさ、地球の人類も同じように無気力になっていって、それでも人工知性体がいたからなんとか上手く回ってるのを見てさ、最初は自分でも作ろうとしたんじゃないかな、って。でもどこかで諦めた。貴方の製造目的を考えるとその頃にはすでに対みみみ星を考えてたっぽいし貴方が生まれる前ね。でも、私と出会ったときは真面目に学んでたんだからあの時はまだ諦めてなかったのかな、って」
「なるほど」
「つまり、私の振る舞いによっては諦めさせずに済んだ道もあるのかな、って」
「え、まあ、確かに時系列的にはそうだけど……?なんかそれ無茶じゃない?」
「そうね。何が原因で諦めたかもわからないし、当時はあいつの所有機でもなかったし。でも――今は所有機だから、あいつがなにも諦めることのないようにしたい。もしもあいつがみみみ星に戻って人工知性体作りたいって言ったら作りれるようにしたい。あいつが望むこと全てに道を作ってやりたい」
 スターウォッチはついエイプリルスノウの表情を確認する。
 ――照れたように苦笑して誤魔化そうしているが、つまりそれはこんなことを本気で言っているのが恥ずかしいということだ。
 彼女はこの専門化が進んだ分野で、本気で人工知性体を生成するのに必要な知識を全部取得して、さらにその先も必要そうな知識は全部持っておくつもりだ。そのどれほど学ぶことが大量にあるかわからない過程をずっと睡眠時間削って学習し続けるつもりだ。
 ……しかもその結論に行き着くまでの思考が全部自己完結してるよね?相談して欲しかったと言いながら自分は絶対一言たりとも拓郎様には今の話をしてない、自信がある。そりゃ――
「そりゃ病むよ!」
「えっ、え、なに?やむ?ごめん、何が?」
「あのさエイプリルスノウ、ひょっとして今の拓郎様の望み全部叶えたいっていうの、義務くらいに考えてる?〝所有機たるもの所有者の願いは叶えて当然。できなかったら所有機不覚悟で切腹すべし〟くらいの感覚で考えてたりない?」
「えっ、え?……ああ」
 エイプリルスノウは何を聞かれているのかわからないという顔をしていたが、しばらく間を置いて納得したように頷いた。
「いや、今のは私の考えでスターウォッチは別の考えでいいと思うよ。日常を守りたいっていうのは水嶋が与えた感覚だしそれが望まれてるんでしょ。実際今言った水嶋のあれこれは妄想みたいなもんだし」
「そうじゃなくて!〝私が考え過ぎちゃったせいで考えが浅かったんじゃないかみたいな不安を与えちゃったかな〟みたいな気遣いはありがたいし実際ちょっと考えたけど今は私に気遣ってる場合じゃなくて!」
「え、ごめん、なんでそんなエキサイトしてるのかちょっとわからないんだけど……。あと今深夜深夜、水嶋寝てる」
 言われて冷静さを取り戻す。そういえば今は深夜2時くらいだった。
 コホン、と軽く咳払いして落ち着く。
 ……さておき、また回復してきたとはいえこのまま放置してたらまたこの子一人で突き進んでストレス過剰にならないかな……。
 クオリア乱数生成世代で、過剰に責任感が高く、さらに誰にも相談しない性格で、思考が暴走しがちだ。
 ……どうしよう。不発弾って感じだ。
 この生活を守らなきゃ、そう思う。いつだってそう思ってきた。とりあえずまずは彼女が暴走しないようにしないと。
「とりあえず対話しようね対話。今、私たちがこの生活を守るために必要なのは多分対話だから。今度3人で色々と話そう」
「えー、対話が必要っていうのは私も同感だけど、まず手始めに私にその結論に至るまでのもろもろを説明して」
「うん、それも含めて今度ね。とりあえず長々と話しちゃったけど、エイプリルスノウは今すぐ寝ること」
「えー……」
 エイプリルスノウは納得いかなそうな顔を作るが、数秒後には諦めたように苦笑した。
「ま、そうね。おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
 
 
 
 挨拶を交わし廊下に出て考える。
 ……でも、拓郎様が色々と諦めたかも、なんて考えたことなかったな。
 かつて志を持ってクオリアデザインについて学び、挫折した経験を持つとしたなら
 ……いつもの〝なんだかやる気がでなくてね〟ってどういう気持ちで言ってたんだろう。
 いつも力なく笑って言っているが言われてみると確かにかつて諦めてしまったことに対する苦々しい気持ちみたいな物を見いだせなくもないかもしれない。
 ……うん、それも今度聞いてみよう。
 そう心に決めて胸の前で両手を握り気合いを入れる。


 結論から言えばそのような話し合いは行われなかった。翌日、みみみ星から届いた小包より三人は史上初の VRMMO, バーチャルクエストに閉じ込められることになる。

study-●バーチャルクエストの概要 その2●-

ねえねえ、エイプリルスノウ。前回バーチャルクエストがけっこう悪く言われてるみたいな話があったけどそんなに悪いゲームだったの?

ん、んー。難しい問いね。ゲーム作成のノウハウが足りないところが作ったから最初色々と酷かった、というのは事実なんだけどちゃんと外部からプロデューサー呼んで色々と改善したしね。それに事実として今でも遊んでる人はいっぱいいるわけだし。

あ、そうなんだ。……え、じゃあなんで過疎糞とか酷いあだ名ついてるの……。

ところどころ崩壊したゲームランス、圧倒的なジョブ格差、理解しがたい謎の世界観、異世界に入って冒険できるという触れ込みのわりに闊歩するモンスターが強すぎて待っているのは村と狩り場を往復して淡々とレベル上げをする日々、ゲーム開始時の国が選べるけど離れすぎてて知り合いと同時に始めても初期の国をうっかり間違えると出会えるのは下手すりゃ半年後、まあ色々あるけどやっぱり治安の悪さかしらね、一番は。街以外のどこにいても理不尽に殺されてデスペナルティを受けるリスクが付きまとうゲームだし。

んー、でも治安が悪いっていうのはやっている人の問題でゲームは悪くないんじゃないの?

いえ、プレイヤーは当然最大効率のプレイをするんだから、人を襲って得するような報酬系を制作してその結果プレイヤーが気持ちよくゲームプレイできなくなったのならそれはゲームデザイン側の問題だと私は考えるわ。
PvP(Player versus Player)要素、つまりまあプレイヤーとプレイヤーが争うような要素って二十一世紀の人類滅亡の危機あたりからあんまり好まれない傾向があって、だいたい闘技場みたいな場所で戦うか、PvPありの専用サーバが作られるか、最低でも上級ジョブになるまでプレイヤーに殺されないようになってるとかそういうのしかないのよ。
そこにどかんと初心者を殺すと得をするようなゲームを出したからそれはもう叩かれたこと叩かれたこと。まあ、すぐ初心者保護システムは導入されたんだけど。

ん、じゃあ今はそんな治安が悪くないんじゃないの?

それがそうでもなかったの。崩壊してしまったモラルは回復しなかった。一度〝プレイヤー同士が殺し合うゲーム〟と認識されてしまったからもう〝そういうもの〟としてしまったのね。結局治安は回復せず、修羅の国オンラインと呼ばれるゲームのままってわけ。

ひゃー……。

あとはこのバーチャルクエストが史上初のVRMMOだったっていうのもあるわね。こういうプレイヤー同士で殺し合う殺伐とした世界を作りたいならそれはそれかもしれなかったし、実際今でも一部のコアゲーマーはこのゲームを愛してる。
でも、史上初のVRMMOということですごい注目を浴びて普段ゲームに興味ない層もやってみようかなと思うような話題作としては〝無難〟ではなかったことは確かね。
普段からゲームで遊んでる層ならまだしも、ファンタジー世界を冒険できると聞いてわくわくしながら購入した人が〝モンスター狩るよりプレイヤー狩るほうが経験値効率がいい〟とか〝プレイヤーに殺されたことのない奴はこのゲームにはいない〟とか言われてる無秩序全盛期のこのゲームに入ったらそりゃそのまま怒ってネットにクソゲーだって書きに行くわよね。
そして、みんながクソゲーだって言ってたらやってない人もクソゲーだって言い出すものだし、結果としてこのゲームは過疎糞と呼ばれるようになったってわけ。

うーん……じゃあ結局本当はけっこう面白いゲームってことでいいのかな。

さあ?まあそれは自分でプレイして確かめるしかないし……ちょうどいいことにこれからいくらでもそれを確かめる時間はあるんだから自分の目で確かめなさい。